TANOKURA100人展やフリーマガジンTANOKURAを運営するSeedersの下田編集長が、会いたい、話を聞きたい、と思う人に会いにいきます!
今回お会いしたのは、栃木県大田原市で「深川アートスクール」を開いている猪瀬辰男先生。前回に引き続き、生徒たちと接するうえで考えていること、気をつけていることをお聞きしました。
#01 描くことの価値
#02 絵を教えない絵画教室
絵を教えない絵画教室
編集長
子どもたちと接するうえで、気をつけていることはなんですか?
猪瀬先生
それは教えないこと!知っていることはどうしても教えたくなっちゃうけれど、それをしないように。
編集長
教えないことって、本当にすごく難しいですよね!
猪瀬先生
子どもたちの作るものにあまり口を出さないで、良いものができたときには褒めるくらいにしています。なんで教えてくれないんだろう?って思う子もいるかもしれません。でも、大きくなったらきっとわかってくれるんじゃないかな。
編集長
子どもが作ったもので、こういう発想すごいなって思うことはありますか?
猪瀬先生
おもしろいものを作るなあと思うことがありますね。でも、昔と比べるとそういう発想もだんだん少なくなっている気がします。学校で全部与えられて、答えがわかったうえでやっているんですよね。
編集長
学校の授業で教わった通りに作品づくりを進めているんですかね。
猪瀬先生
そう、だから絵画教室が始まったころの熱気とはまるで違うと感じます。最近の子どもたちは、みんな上手で要領も良くて素晴らしい。ところが、本人がそれを喜んでやっているのかがわからない。
この教室を継続している子はどちらかというと、自由にさせてくれるんだ!というのが楽しくて来ている子が多いんです。だから、僕が口を出すと、これでいいの!なんて言われちゃう。
編集長
そういう子は、自分でやりたいことがしっかり決まっているんですね。
猪瀬先生
はい。だからそういう子がダメな子かっていうと、そうじゃない。自己意識が強いので、ちょっと意識が変わるだけですごいものを作るようになるんです。
編集長
その機会を大人が摘んでしまわないようにしたいですよね。ことさら教えないようにするというのは、子どもたちが自分でなにかを得る機会を作ることでもあるんですね。
描くことの価値
猪瀬先生
子どもたちは普段、なにかをじっくり見るという機会があまりないのだと思います。
編集長
やっぱり日々の勉強や部活で、なかなか時間がないというのもあるんでしょうね。
猪瀬先生
だからせめて絵を描くときだけは、鉛筆と紙を持ってじっくりなにかを見るというのを大事にしてほしい。描いた絵の上手い下手よりも、対象をよく鑑賞してそれが心に残るという経験が、絵を描くという行為によって獲得できるんです。
編集長
経験って大切ですよね。絵を描くことの価値も、きっとそこにありますよね。
私は絵を描くわけではないのですが、子どもたちにさまざまなチャンスを作りたいんですよ。いろんな仕事をしている人から、例えば「水の環境っていうのはね」みたいな話を聞くチャンスを。
私は絵を描くわけではないのですが、子どもたちにさまざまなチャンスを作りたいんですよ。いろんな仕事をしている人から、例えば「水の環境っていうのはね」みたいな話を聞くチャンスを。
猪瀬先生
そういう機会を作らないと、なかなか子どもたちの目に入らないものかもしれないですね。
編集長
そうですよね。普段見えないものごとの背景を知ることは、すごく大切なこと。私たちがその機会を作って、子どもたちにたくさんの経験を得てもらえたらと思います。
今回は、ひとりでは得られない経験を得られる、絵画教室の考え方に触れることができました。絵をはじめ、子どもたちがいろいろな経験ができる場がたくさんあったら素敵ですよね。先生にお聞きしたお話を胸に、キッズアカデミーを盛り上げていきたいと感じています。
さて、次はどんな人に会いに行きましょうか。
次回もお楽しみに!
猪瀬先生編#01 描くことの価値今回お会いしたのは、栃木県で「深川アートスクール」を開いている猪瀬辰男先生。50年以上絵画教室を続けている先生と、絵を描くことで得られる経験についてお話ししてきました。...