こんにちは!TANOKURA編集部です。
フリーマガジンTANOKURA vol.31の特集は、「日本酒を召し上がれ」。なんとも心惹かれるタイトルではないですか!こちらを制作するにあたり、栃木県は旧岩舟町の小さな酒造、相良酒造さんを取材させていただくことになりました。今まさに日本酒を作っているところを見学させていただけるなんて素敵!でもそのためには、前日から準備が必要。前日は納豆を食べてはいけないのです。納豆菌が、酒造りに必要な微生物のじゃまをするのだとか。これも酒造見学のため、がまんがまん。
取材当日は、寒いけれど良く晴れた日でした。今年で190周年を迎える歴史ある酒造は、建物も設備も情緒たっぷり!外にある大きなタンクの乗ったやぐらの下は、井戸なのだそう。下から水をくみ上げて、タンクにためて使います。相良酒造には全部で4つ井戸があり、この井戸は主に、道具を洗うための井戸。仕込み水として使う水も、敷地内から湧き出ています。初代がおいしい水を探し求めて全国をめぐった結果たどり着いた、日光連山からの伏流水。この豊かな水が、おいしい日本酒につながるのですね。
広い敷地にいくつも建物があるのですが、日本酒を作っているのはこちらの仕込み蔵。仕込み蔵に入ってすぐの白くて大きなものは、甑(こしき)というお米を蒸すための器具だそう。そして、ここで日本酒の原料となる酒米を蒸すのが、蒸米(むしまい)という工程なのだとか。その蒸したお米を運ぶのは、とにかく重労働!地域の方に手伝っていただくこともあるそうですよ。
扉には朝日榮と、「芳香冠六合 陽生天地春」の文字。六合とは、東西南北に天地を加えた六方向、すなわち全世界のこと。香りがとても豊かで、飲めば陽が出て春が訪れるようだ、という意味だと教えていただきました。飲む人みんなに春が訪れる、朝日榮。どんなふうに作られているのでしょうか。ここから先は土足厳禁!いよいよ奥に入ります。
なかには大きなタンクがずらり。ここで行うのが、仕込み(もろみ造り)の工程です。発酵中のもろみは頻繁に温度をチェックし、品質管理を行います。10月から3月の仕込みの間は、気温状況に合わせてタンクの管理を行うため、睡眠をとるのもままならないのだとか。こうしてタンクで3週間から1カ月ほどじっくり発酵させて、日本酒の元となるもろみができあがります。もろみを絞った液体が、日本酒。そのとき残った固形物が酒かすです。
私たちも、タンクのなかをこっそりのぞかせていただきました。
真っ白!そしてアワアワしてる!「今日が一番泡が出ている状態ですね」と杜氏。耳を澄ますと、プチプチ泡がはじける音が聞こえてきます。味だけでなく、色も香りも音も温度も、五感をフルに使って状態を見極め、良い発酵状態を保つことでおいしい日本酒が醸されるのです。杜氏の腕の見せ所、ということですね。
一番奥にあったのが、麹を作るための部屋、麹室。蒸したお米はここで麹に生まれ変わります。蒸して冷ましたお米に麹菌をふりかけ、数日かけてお米に菌を繁殖させ、できあがったのが麹。この工程を、製麹(せいきく)と呼ぶそうです。昔はそのうちの「枯らし」という乾燥の工程を別の場所でやっていましたが、運ぶのも大変なうえ、冷えすぎて結露が発生することもあったそう。新しく麹室を作り直す際に、製麴の工程をひとつの場所でできるようにしたのだと伺いました。新しい麹室の壁は無垢の木材。吸湿作用がある優れものです。この麹室の温度は、30℃以上!そのなかでの作業はきっと過酷ですよね。それでも、おいしい日本酒を造るためのとても大事な工程です。
今回お話を聞かせてくれたのは、杜氏の相良沙奈恵さん。むかしは女人禁制だった酒蔵も、今はすっかり様変わり。蔵で女性が働く姿を見るのは、そう珍しいことではなくなりました。とはいえ重労働には変わりなく、女性には過酷な職場です。杜氏曰く、「あかぎれが全然治らないんですよ!指の節は出ちゃうし、手のひらが日増しに厚くなるんです」。水仕事でもありますし、毎日重い物を運んだりすることで、手のひらや指の筋肉が自然に鍛えられてしまうんでしょうね。でも、きっとそれこそが杜氏の手。その手で今年もおいしい日本酒を醸してくれるに違いありません。
最新号のTANOKURA vol.31のサブ特集「日本酒を召し上がれ」でも、相良酒造さんの魅力をご紹介しています。
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