LIFESTYLE

手づくり作家インタビュー

2018.05.28

革という素材との出会い
それが幼い頃からの「自分の好きを仕事に」という夢を叶えた

自分の好きを形にできる素材選びの中で幼い頃から好きだった革を選び、鞄を中心に製作。「自分の好きを形に」をモットーに制作に励む。現在は個展を中心に各地イベントへの参加にて活動中。
  • 1997 年/文化女子大学短期大学部 生活造形学科 卒業

  • 1999年/家具会社を退職後、革の店にて働きながら素材や仕立てを学ぶ

  • 2001年/Dipsum として製作をはじめる。福岡にて初個展

  • 2004年/工房兼カフェギャラリーDipsum 製作から展示販売の店をはじめる

  • 2007年/革工房Dipsumとして鞄製作活動を中心とする。その後、イベント参加、個展にて活動中。

作家になるまで

将来の夢は幼い頃からモノづくり、「自分の好きを仕事に」でした。そのためにいろいろな道具を買って作ることが日常。お菓子づくり、洋裁、木工、陶芸、染色…いろいろな素材を経験し、自分の好きを形にできる素材探しは随分してきたと思います。
 
短大生の時は建築家や家具デザイナーに憧れて、卒業してから家具の会社に就職しましたが、「自分の好きを仕事に」という目標には程遠く、違和感の中で仕事をしていました。そんな中、会社の休憩中インテリア雑誌で革の鞄デザイナーの記事を読んだのをきっかけに、長く使えて、時が経つほどに自分色に味の出る革素材が大好きだということに気づきました。小学生の頃修学旅行の為に買ってもらった牛革ベルトを現役で使い、中学生の頃アメ横で買ったヌメ革のペンケースを、高校生で初めて買った牛革バックに入れて通勤している私…革だ!と、やる気スイッチを見つけました。

その後、家具の会社を退社し、革の材料店で働きながら革の材料や仕立てを学び、革工房Dipsumとして製作を開始。デザインから素材選び、型紙製作、裁断、仕立てと、自分の好きを最初から最後まで形に出来る仕事をすることができました。工房兼カフェギャラリーの店をもち展示販売を経験しましたが、いろいろな葛藤から製作に重心を置くことに。その後は益子の陶器市やクラフトフェアまつもとでの参加を経て、各地のギャラリーでの個展で活動をしています。

作品についての想い

革は1頭の動物の「皮」から大変な手間をかけなめされて1枚の「革」になります。
皮の肌質の違いやなめし方の違いで柔らかさや色の染まり方に違いが出るので、その時点で1点ものの天然素材だと思います。また革は使う部分によってさまざまな特徴があります。手足や腹部分はよく動かすので柔らかくしわがあり、肩や背中部分は硬くてきれいなことが多い、傷があったり、イボがあったり、焼き印されていたり…というように。素材のウイークポイントをそのまま使い、更に自分の思うかたちに創造できて、市販にはないオリジナル感が出せるところが私の作品の魅力だと思っています。「自分の好きを仕事に」出来て、お客様が喜んでくださったときの達成感が好きですね。
 
過去にはお客様目線での要望を聞きすぎて好きでないモノを作ってしまい、後悔することもありました。いろいろ葛藤しましたが、戻るところはdipsumの基本そのままです。dipsumのd(design)デザインはi(intuition)直感を大切にp(pride)プライドを持ってs(sophisticated)洗練されているかu(useful)使い勝手を見極めながらm(material)素材を大切に製作していきたいです。

今後のこと

ファストファッションの流れで安価な異素材であふれている昨今。重くて高価な革のバックを選ぶ人が少なくなってきたのかなと感じることがあります。安価な異素材バック、高級ブランドの革の鞄、手づくりの軽い素材のバック…。ライバルのバック全てに選ぶ人の理由があって、そのバックの良さがあります。
 
Dipsumの革のバックを選んでもらう為に、「理由」と「良さ」の特徴(価値観)を明確にしていくことがこれからの目標です。今後、Dipsum鞄の価値観に納得して、選んでくれた人たちが自慢出来るような鞄づくりができたらいいなと思います。

オトナ展感想

①オトナ展に選ばれたときの感想
体調不良時のお誘いだったので、万全の状態で参加できるのか不安を感じ、すぐに返答出来ず悩みました。仕事は健康第一を痛感しましたね。
 
②そこからの努力
全力で体調管理。オトナ展のイメージを悪くさせないよう作品づくりはもちろん、展示什器づくりに努力しました。
 
③オトナ展出展で得たものは何か
他の参加作家さんから作品作りでの思いや努力を聞けて、共感や刺激を得ました。
TANOKURAの意味、楽しむ暮らしのオトナ展であったことに、自分の暮らしの楽しみ、仕事の楽しみ、生き方の楽しみを見直そうと思いました。

Dipsum
TANOKURAレポーターの感想
「仕事としてのモノづくり」にこれほどまでに貪欲な方も、そういらっしゃらないのではないでしょうか。革という素材に出会うまでの色々な経験は、今のDipsumとしての作品に多くの影響を与えているのでしょうね。福田さんのお話を読み返し、改めて革ほどストーリーのある素材は少ないと感じました。素材の魅力と、作り手のプライドが一体になってできあがった作品は、大切にしたいものにならないはずがありません
ライター:tomoko
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