LIFESTYLE

手づくり作家インタビュー

2017.02.20

自分にしか出せない
ワイヤーの編み地を魅せたい…
ひと目ひと目丁寧に編んだ大人アクセサリーを

ワイヤーの編み地の美しさを前面に出したアクセサリー“ワイヤークロッシェ”を考案し、ブランド[FILIGRANO]として作品を発表。大人の女性が日常の中で身につけられるアクセサリーとして、シンプルなデザインを中心に制作中。
  • 1974年/兵庫県神戸市に生まれる

  • 2009年/ワイヤークロッシェのブランド
        【FILIGRANO】を立ち上げる

  • 2010年/「Bunkamura craft collection」に
         初出展

  • 2013年/テレビ東京 「ガイアの夜明け」にて
         紹介される

ワイヤークロッシェ作家になるまで

私はものづくりが苦手な子どもでした。
基本不器用で、裁縫や図工などの授業でも何をやってもうまく作れず、絵も苦手。そのせいか手芸全般に興味が持てず、女の子らしい趣味は何もありませんでした。まさか大人になってアクセサリーを作るようになるとは思いもしませんでしたね。父親の影響で映画がとても好きで、映画制作など映像関係の仕事に就くことが将来の夢でした。

大人になり、アート系とはかけ離れた一般企業に事務職として勤めていましたが、結婚後、純銀ワイヤーをかぎ針で編んで作るアクセサリー“純銀クロッシェ”と出会い、同じワイヤーでも細さや柔らかさが違えば、全く違う形に変わるワイヤー編みの世界にあっと言う間に引き込まれました。実は、かぎ針で編んだのはこの純銀ワイヤーが初めてで、毛糸もレース糸も編んだことがありませんでした。毛糸編みやレース編みの癖がない分、逆にワイヤー編みを抵抗なく習得できたのかもしれませんね。そしてこの技法を発展させ、編み地を前面に押し出した、よりシンプルで普段使いできるオリジナルアクセサリーを作りたいと思う気持ちが強くなり、試行錯誤を繰り返すうちに、自分が納得するスタイルとして“ワイヤークロッシェ”を確立することが出来ました。
 
 

仕事と暮らしと環境

部屋の一角に大きめの作業机を置き、平日の日中はワイヤーをかぎ針で編むことに集中しています。一昨年の秋に左手首を腱鞘炎で痛めてしまってからは、サポーターをつけて作業をしたり、少しでも痛みを感じたら早めに休むようにしています。
休日はなるべく主人と過ごす時間を大切にしています。自転車で江ノ島まで走ってみたりもしますが二人ともお酒が好きなので、美味しいもの食べに行ったり、家で料理をしながら宅飲みすることも多いですね。主人の方がDIYに詳しいところがあるので、イベント用の什器の制作を手伝ってもらったりイベント出展時には搬入・搬出、設営などの協力をお願いしています。作家活動を続けられているのも、主人の理解と協力があっての事だと、とても感謝しています。

作品についての想い

ワイヤーならではの繊細さと柔らかさを大切に、大人の女性が日常の中で身につけられるアクセサリーとして、シンプルなデザインを中心に作っています。

様々な素材を組み合わせながらワイヤーを編んでつくるコスチュームジュエリーやビーズアクセサリーのような作品は多いのですが、金属であるワイヤーだから出せる編み目の美しさを生かしたいと思い、なるべくワイヤーのみで形を作ることにこだわっています。ワイヤーをメインで表現するには、「均一に細かく編めること」と「編み地を成形する力」が重要になってきますので、自分でしか出せないような編み地が作れるよう努力しています。一つの事をコツコツと続けることが苦ではない性格が功を奏したのか、不器用で上手くできなかったからこそワイヤーを上手く編めるよう努力を重ねてこられたのでしょうね。

ワイヤーは編み直しが難しい素材なので、ゆっくり時間をかけ、慎重にひと目ひと目丁寧に編むことも心がけています。どのようなお洋服にも合わせられるようシンプルなデザインですので、コーディネイトに悩んだ時など思い出してもらえて、いろいろなシーンで活躍できたらとても嬉しいです。

今後のこと

ワイヤー編みと出会い、急に新しい世界に惹かれて、作りながらアイディアや思いが膨らんで今に至った感じです。自分でも不思議な気がしています。これからは、今まで以上に技術とデザインを磨き、一つでも多くの新しい形を生み出し、金工として工芸として“ワイヤークロッシェ”を高めていけたらと思っています。その中でこれからもいろいろなイベントに出展し、魅力をよりたくさんの方に届けていきたいです。アクセサリーだけではなく、ワイヤーフラワーのようなインテリアアートとしての作品づくりにも挑戦したいと思っています。

FILIGRANO(フィリグラーノ)さん
TANOKURAレポーターの感想
これまで何人もの作家さんにお話をお伺いしてきましたが、「子どもの頃から不器用でものづくりは 苦手だった」とおっしゃった方は初めてでした。この緻密な編み目からは想像もできないのですが、 だからこその努力の賜物かと思うと、作品に重みを感じます。丁寧にひと目ずつ編まれた作品は、シンプルだけど手間がかかっていることが一目で分かり、まさに大人向けのアクセサリーと言えますね。
ライター:tomoko
あなたにオススメの記事