LIFESTYLE

手づくり作家インタビュー

2017.02.06

たくさんのものが溢れる時代だからこそ
丁寧に大切に扱ってもらえるものづくりを

京都と笠間で陶芸を学び、現在は地元の新潟を制作拠点とする。陶器市やクラフトフェアなどのイベント への参加、個展や企画展への出展などを通じ、「日々の生活の中で使ってほっとできる器」をテーマに制 作・発表している。
  • 1982年/新潟生まれ

  • 2005年/京都府立陶工高等技術専門校、成形科修了

  • 2005年〜/笠間焼の窯元に勤務

  • 2008年/新潟市で独立

陶芸作家になるまで

子どもの頃から絵を描いたり、ものを作ったりすることが好きでした。小学校の社会科見学で仏壇の彫師さんの仕事を見学させてもらったとき、おじいさんなのに手がとてもきれいで、職人さんに憧れを持ったことを覚えています。
大学在学時に(就職活動時)本当にやりたいことを一生の仕事にしたいと考えるようになり、器が好きだったこともあって、陶芸を選びました。大学卒業後に京都の職業訓練学校に入り1年間基礎を学び、その後茨城県にある笠間焼の窯元に就職しました。当初は職人としてやっていきたいと思っていましたが、笠間では個人の作家として活躍している人が多く、窯元で長年働くという雰囲気ではありませんでした。入った窯元では数年勉強してから独立するという人が多かったため、私も考えが変わり、3年で独立することに決めました。

仕事と暮らしと環境

独立するにあたり、活動しやすい産地にするか地元に帰るかでかなり悩みましたが、家族と住みたいと思い地元新潟を選びました。新潟に帰ったときに田んぼが続く広い平野を見て、呼吸がしやすいと感じました。それまで住んでいた所が息苦しかったというわけではないのですが…生まれ育った場所を体が覚えているからなのかもしれませんね。そんな場所で日々過ごせることは幸せなことだと思います。
産地と違って材料が手に入りにくかったり、作家仲間が少なかったりという難点はありますが、競争が少なく自分のペースで制作できるという点では自分に合った環境だと思います。益子陶器市では周りに同世代の作家さんが多く出展しているので、ここぞとばかりに色々相談させてもらっています。
通常は朝9時から夜7時くらいまで、忙しい時は夜10時くらいまで、自宅から少し離れた工房に通って仕事をしています。窯は(わけあって移動できないので)自宅に置いていて、工房で制作した器を自宅に運んで焼いています。窯焚きをする時は丸1日(20時間くらい)窯に付いています。

作品についての想い

私の器は主に電動ロクロを使って成形しています。手作りならではのあたたかみややわらかさを出すために、へらなどの道具は使わず、なるべく手だけで形を作るようにしています。釉薬は自分で調合しています。金属を入れて質感や色を出していますが、窯の中での火の当たり具合や天候などに影響を受けてひとつひとつ雰囲気の違う器になります。そこが難しくもあり、楽しいところでもあります。ひとつひとつ表情の違うものの中から自分だけのお気に入りを選んでもらえればと思います。
いつも生活の傍らにあって、愛着を持って長く使ってもらえるものを作りたいと思っています。たくさんのものがあふれた時代だからこそ、丁寧に大切に扱ってもらえて、壊れてしまったら悲しんでもらえるような器を作るよう、心掛けています。

今後のこと

今までは制作するだけで精一杯でしたが、今後は器の使い方や、料理の盛り付けを提案するなど、今まで以上に器を見てもらえるようにするための活動にも力を入れていきたいと思っています。
制作環境に関することでは、窯が置ける新しい工房を探しているところです。現在は、自宅から窯を動かせないので、工房で制作した器を自宅に運んで焼いています。壊れないように運ぶのが大変で時間も手間もかかるんですよ…。本来なら工房に窯を置けるのが理想なので、そのような環境が整ったら、活動の幅を広げる時間もできるのかな、と考えています。

後藤奈々
TANOKURAレポーターの感想
後藤さんのつくる、ぽてっとした温かい質感の器はとても親しみを感じ、ご本人が目指されているの が「いつも生活の傍らにある器」だということに納得します。割れてしまうという性質を持った器。 だからこそ余計に、お気に入りのものを日々の暮らしの中で丁寧に使い続けることができたら、生活は 潤いあるものになるのでしょうね。
ライター:tomoko
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